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「でも後でウェイトレスの子に言われて知ったんです。仕事で来る前に、あの人うちの店に何度も食べに来てたわよ、って。近隣の客層が似ている店でも見かけたって」
地道に徹底的に調べ上げてこその説得力だったのか。
「で、改装の結果はどうだったんですか? 」 母が興味深げに聞いた。
そうだよね、それが一番肝心だ。
「それがね、ニコラス氏……彼の上司ですが、彼のチームがレストランを手掛けるのは珍しいっていうんでまず話題になって、マスコミとかでも取り上げられたこともあって人気レストランに返り咲きました。内装が素敵っていうんで雑誌の撮影に使われたり、有名人とかも来るようになって。それでスタッフもすっかりやる気になっちゃって、今でもあのエリアの人気レストランだと聞いています」
「すごいんですね……」
感心したように母がため息をついた。
……そうか、そういうことなんだ。
なんだかわかってきた気がした。
怜はやり手のアートディ―ラーだといろんな人から聞かされていたが、彼が売り込むのは物としてのアート作品だけじゃない。彼はアートを介してその人の住む場や仕事場の印象を変え、生活や商売がさらに向上するようなトータルなパッケージを売り込んできたんだ。
だからあの世界から身を引いた彼のことを今でも皆が惜しんでいるのか。
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