番外編 (日本にて): あの人の急襲

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「あの方はやっぱりパリでもモテていらしたんですか?」 ちょっとお母さんたら、そんなド直球な聞き方しなくても! 「そうですねえ。パリには1万人を超える日本人が住んでいると言われますが、その中には若い女性も数多くいます。私のいたレストランの改装の記事が新聞に載った時、永嶺君の顔写真も出てしまいましてね。それから何人もの女性に、あの人とお知り合い? 紹介して? と頼まれました」 こちらもどうぞと豆のサラダを勧めながら、西方さんは微笑んだ。 「でも永嶺君に探りを入れると興味ないの一点ばりで。自分は結婚も家庭を作ることにも関心がないから、女性と付き合う気もない、とね」 「あらまあ、じゃあどうして理佐には……」 「そこが僕も一番驚いたところなんですよ」 西方さんがまさに身を乗り出してきてうなづいた。 「ここに店を開いて半年くらいして、ある日突然彼がふらりとやってきましてね。驚きました。お前、いつ日本に戻ってきたんだ!? って。しかもなんとお爺さんの会社の栄詳で働いているって言うじゃないですか。あんなに成功してたキャリアがあったのに一体どうしたんだ!?  と」 まるで当時の驚きを再現するかのように彼は目を見開いてみせた。
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