番外編 (日本にて): あの人の急襲

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「でもなあ、離れているんだから、なおさら電話やメールはマメにした方がいいぞ」 「わかってるけど、ヘタにこちらが参ってる時に連絡してしまうと、さっきみたいに叫んでしまいそうで」 「 “行かせるんじゃなかったー!” てか?」 「 “もう帰ってこいそばにいてくれ!” って口からホントに出そうになる」 「言えばいいじゃないか」 「そういうわけにはいかないんだよ。アメリカで頑張れって言ったのは俺だし、それに理佐は本当に向こうで頑張っているんだ。彼女の写真には光るものがある。それをできる限り伸ばしてやりたいんだ」 「お前がそう言うんならそうなんだろうな」 アートディーラーとして活躍していたころの彼を思い出してうなづいた。 「じゃあこのまま日本とアメリカで離れてずっとやっていくということか」 「うーっ、それは…………」 聞こえるか聞こえないくらいの小さな声で 「……嫌だ」 と呟くと、目の前の男はカタンと音を立ててグラスを置き、テーブルにそのまま突っ伏してしまった。
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