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「特に副社長になってからは、」
「ははは、はい!? 」
ドキドキしながら思いにふけってたので、再び話しかけられて飛び上がりそうになった。
「いや、特に彼が副社長になってからはさらに忙しくなって、かなり長い間会いにも行けなかったんでしょう?」
「……はい」
そうだ。1年半近く会えなかった。
「辛そうでしたよ。もう帰ってきてほしいって言えよって何度も勧めたんだけど、彼女は今まさに写真の道で活躍しはじめてるのにそれはできないって。永嶺君自身が以前は新鋭のアーティストを見いだしては育て売り込む側だったから、そういう意味でも尚更応援したい気持ちと、恋人としてそばにいてほしい気持ちとの間でかなりの葛藤があったようです」
あの頃、辛かったのは私だけじゃなかったんだ。
今度は鼻の奥がムズムズしてくる。
「だからほんとにこうしてお二人がついに一緒になれて僕もすごく嬉しいんですよ。……それに、」
それに?
「あれほど結婚はもちろん、恋愛にすら興味がないとまで言っていた彼がそこまで惚れてしまった人ってどんな方だろうと思っていたのですが、今日本郷さんにお会いして納得がいきました」
「それはいったい……」
どういうことなんだろう? 知りたいような、知るのが怖いような。
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