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「いやそんな構えないでください」
西方さんが笑った。
「なんというかな、漠然となんですけどね、雰囲気が似ているところがあるんですよ。そうそう、本郷さんもクラシックギターを弾くんでしょう? あいつ……いやすみません、永嶺君も今でこそビジネスにどっぷりだけど、昔は絵を描いたりギターを弾いたりしてましたからね。何か通じているものがあるような、そんな感じですかね」
うまく説明できなくてすみませんがと彼は言うが、小学校の時から怜を知っている人なのだ。何かそう思わせるものがあるのだとしたら素直に嬉しい。
「アートディーラーだったと伺っていたけど、彼自身絵を描いたりもするの? 」
はっ。
今まで黙っていた母が急に口を挟んだので焦って振り返った。そうか、今までの話、全部お母さんに聞かれてたんだ! すっかりその存在が頭かの中から消えてた!
「あらためてお伺いしますが、副社長さんはこちらに来るときはいつもお一人でいらしたんですか? 」
母の質問に、西方さんの笑顔が消えて顔が引き締まった。
「はい。僕はここでの彼しか知りませんけど、いつも一人でした」
「ストイックなのかしらね」
「実は一度、そんなに滅多に会えない関係に苦しむくらいなら、新しい恋をしようとか思わないのか? って率直に聞いたことがあるんですよ」
そんな、煽っちゃったんですか西方さんっ!?
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