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西方さんに連れていかれた店の奥には倉庫のようなスペースがあり、真ん中に小さな作業台があった。彼が重そうなアルバムを幾つか書架から出してきてその台の上に乗せた。アルバムにはすでに付箋が貼ってあった。
「これは1年生の時の運動会」
大玉転がしだろうか? 大きな赤い球の脇に先生と思しき人と子供たちが並んでいる。
「どれが彼だかわかりますか? 」
「えっと……」
さすがに6-7歳の子達に30代の怜の面影を見いだすのは難しい。でも目のくりくりしている可愛い子が目を引いた。
「この子、可愛いですね」
「あたり。さすがですね」
「えっ、この子が怜なんですか!? 」
うわあ。こんな子が傍に来たらヨシヨシしてしまいそうだ。
その他にも何枚か写真を見てはしゃいでいると、西方さんの携帯がまた鳴った。
「お連れさんが見えているみたいですね」
お連れさんって、怜が着いたの?
「あの、このアルバム、母にも見せていいですか? 」
「もちろんです。僕も持ちますよ」
3冊ほどのアルバムを選び、二人で抱えて席に戻ろうとすると、西方さんに肩を軽く叩かれた。
「何かすでにお二人で話しこんでいるようですし、キリのよさそうなところまでちょっと待ちましょうか? 」
そういえば怜は母と話したいって言ってたっけ。
西方さんに誘われるまま、さっき座っていたブース席の裏にある狭いスペースに陣取った。
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