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「理佐さんとスペインで過ごした時、彼女が好きだという音とか、綺麗だと思う風景とか、僕も傍にいて心から同じように思えたんです」
怜の声に、二人でアンダルシアを旅した日々が鮮やかに蘇ってきた。
そうだ、私もそうだった。あの時、怜が私に聞かせたいと言った噴水から溢れ出る水の音に心が震えそうなくらい感動したんだ。
「会ったばかりなのに隣にいて不自然に感じない人、そういう女性は初めてでした」
怜、そんなふうに感じてくれていたんだ……。
「一緒にいて、どんどん惹かれていく自分の心を止めることができなかったんです。何度も、ダメだ、誰かと深く関わるつもりはないはずだろうと自分に言い聞かせてブレーキをかけようとしたけど無駄でした。理佐さんと出会って、この人にそばにいてほしい、そう強く願うようになってしまったんです。それで、」
彼があの頃どう思っていたか、彼の口からここまで詳しく聞くのは初めて。隠れて聞いている自分の方が胸が熱くなってくる。
「それで当時経営危機に陥っていた祖父の会社に助っ人に入ることにしました。自分の仕事の経験を使えば助けられるかもしれないと思ったからですが、もう一つの大きな理由は日本に行けば理佐さんがいると思ったからです。……けれど」
続く言葉に目を瞑った。
「……けれど、思ったようには事は運びませんでした」
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