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「けれど理佐さんが旅行中に語っていた写真家になりたいという夢だけは陰ながら助けたいと、それだけは心に決めていました」
ああ……毎日同じビルの中にいるのに顔を見ることすらできなかったあのすごく辛かった日々を思い出す。でも辛いのは私だけじゃなかったんだとあらためて思う。
「でもこんな状況では二人の関係はもう終わりだと僕は諦めかけていたのに、理佐さんは僕のことを信じて待つと言ってくれたんです。栄詳の改革が何年かかろうと、改革に反対している皆が理解してくれるまでどれだけかかろうと、待ってると言ってくれたんです。そして本当にーーー」
待っててくれたんです、という声がまた少し震えているような気がした。
「もう誰も信じない、誰もそばにいてくれなくていいと心に決めていた僕に、理佐さんがもう一度人を信じることを教えてくれたんです。そばに大切な人がいるというのがどれほど嬉しいことなのか、どんなに心休まることなのか、理佐さんが教えてくれたんです。だから、」
「だから僕は理佐さんじゃなければ結婚はしません。他の人なんか絶対に考えられません」
怜……!!
喉の奥が熱くなってきて思わず口を押えた。
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