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「ただいまー」
「あー、疲れたー」
マンションに戻ってホッとした私とは対照的に、怜は靴とコートだけを脱ぎ捨てると力尽きたようにソファに体を投げ出した。
この週末の二日間は仕事が入っているうえに私の母に気を使いまくりだったろうから、無理もないのだろう。
「怜、いろいろとありがとうね」
ソファのあいてる隙間を探して彼の膝近くに座る。
「ああ」
怜は半身を起こすと私の顔を覗き込んだ。
「あんな感じでよかったのか? お母さんを安心させることができたと思う? 」
「うん、思うよ」
「そうか。それならよかった」
「週末を潰させちゃってごめんね」
「いやそれはいいんだけど……」
何か言いたげな怜に彼の顔を覗き込む。
「なに? 」
「いや、別に大した問題じゃないんだが、俺が店に遅れて来る前に二人で西方と話してたんだろ? 」
「うん」
「その、あいつ、なんて言ってた? 」
怜ったら何を気にしてるんだろう。ちょっと悪戯心が湧いた。
「私がアメリカに行ったあと、会いたい~ってお店に来て泣いてたって」
「え―――!!?? マジかっ」
怜が文字通り頭を抱えた。
「……な、わけないでしょう。でもお店にはいつも一人で来てたとは言ってくれた」
怜の困惑ぶりに悪いけど笑い出しそうなのをこらえて真面目な顔でそう言うと、彼はマジマジと私を見た。
「……それだけ? 他には? 」
「仕事メシだと栄養が偏るから、お店で体にいいもの食べてもらいましたとも言ってた」
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