3596人が本棚に入れています
本棚に追加
/1588ページ
「怜が栄詳の改革なんて大変なことをやってる時に、いいお友達が日本にいてくれてよかったってホントにそう思ったよ」
ただ社長の孫というだけで、外からやって来た怜が下から叩き上げで出世してきた20も30も年上の役員たちを相手に改革を進めていくのは並大抵の大変さではなかっただろう。当初は特に四面楚歌だったと聞いている。そんな時に辛さを吐き出せる場所があってよかった。
「怜が大変だった時、ほんとなら私が傍にいて支えてあげられたらよかったんだけど、西方さんみたいな方がいてくれたんだなってわかって嬉しかった」
手にふわっとした感覚が走った。怜が私の手に自分の手を重ねたのだ。
「理佐はいつも俺の傍にいてくれたよ」
どういう意味? 怜の目を見つめると彼も見つめ返してくる。
「理佐がいたから頑張れた。いつかこうして一緒になろうと思っていたから」
手を重ねる力が強まった。
「でもあいつの言う通り、時には辛くて泣いたけど」
「えーーーっ!? マジ? 」
怜が?
「な、わけないだろう」
やだ、なに、さっきの仕返し?
彼を睨もうとすると怜が笑いながら舌をちょろっと出した。
「と、いうのは半分嘘」
「は?」
「心の中では時々泣いてたよ」
「え、うそ、ほんと? なんで? 」
驚いていると体ごと怜の方に引き寄せられ、耳元に彼の息がかかる気配がした。
「……会いたくてたまらなくて」
最初のコメントを投稿しよう!