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「そうだよ」
怜が観念したように目を閉じた。
「仕事の方で全く余裕がないのに理佐のことを考え始めると止まらなくなるから、感情に無理やり蓋をして押し込んでいた。特に副社長になってからは、予算に人事に新規プロジェクトに海外との交渉に不動産の子会社の仕事にまで絡まされてもう滅茶苦茶だった」
そんなに……!?
「クタクタになって深夜に帰宅して、理佐が作って置いていってくれた食べ物の入ってたタッパとか見るとさ、あー、俺、いったいもう何やってんだ!? みたいな」
「タッパ、取っておいてくれたの? 処分してくれてもよかったのに」
「捨てられるかよ。で、そんな時に電話で理佐の声とか聞いてしまうともう感情を堰き止めてる堤防が決壊しそうだった」
「決壊……」
「もう帰ってきてくれよ、シンドくて堪らないんだ、こうやって甘えさせてくれよ、……って海の向こうから懇願されても困るだろ? 」
あ、これ、甘えてるんだ……
「だから電話もメールもできない時がままあった。今だから言うけど、一度ホントに日本に連れて帰るつもりで、というか帰国してくれと頼むつもりで、理佐に会いに行った」
えぇっ!?
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