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「あの1日いただけでとんぼ返りした時。あの時、本当は展示会での理佐の絵を見るだけじゃなくてもうひとつある決心をしてアメリカに行ったんだ」
決心……?
「一時的でもいいから東京の俺の元に戻って来てくれって言うつもりだった。一緒に住むのに必要なら籍を入れて式もあげようとさえ考えていた。あの頃はほんとに精神的にもう限界だったから……」
予想もしなかった話に愕然とする。
「じ、じゃあどうしてたった一晩で帰ってしまったの」
朝起きてみたら怜の姿がなくて、私こそ本当に悲しかったのに。
「現地についてまず目に入ったのが新人賞を取った理佐の作品だった。俺たちの思い出の場所をテーマにした写真だった。あのパリでの滞在の間に見せてもらった作品で俺は君の写真家としての可能性を感じて背中を押した。それだけじゃなく原先生や親父に頼んで、その道をさらに追及できるよう後押ししたのも俺だ。それなのに、」
怜が唇を噛んだ。
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