番外編 (日本にて): あの人の急襲

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「理佐が新人アーティストとして賞を獲りマスコミにも取材されてこれからという時なのに、駆け出しのアーティストにとってそういう時期や勢いがいかに大切かということはよくわかっているのに」 「異国に一人乗り込んで自分の力でそこまでの成果を出すのがどれほど大変だったか、俺も20代初めにパリに移り住んでキャリアを積んだからよくわかっているのに」 「そしてたった2-3年で、理佐はアメリカで仲間を作り居場所を築いたんだってこの目で見て理解したのに」 畳みかけるように一気に言うと怜は深いため息を落とした。 「それなのに、他でもない理佐をアメリカに送りだした俺が今度は都合よく自分のために戻ってこいだなんて言えるわけがない。理佐の大切なチャンスを奪うわけにはいかない、そう自分に言い聞かせたんだよ。だけど……」 「だけど頭では理解しても気持ちの上では辛くて、だから理佐のそばにあれ以上いることはできなかった。あれ以上いたら、理佐が目を覚ましてしまったら、本音をぶちまけてしまいそうだったから」
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