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「だから昨日理佐が言ってたような、早く日本に帰って会いたい人がいたとかとんでもない。俺が会いたかった人はこの人だけだから」
怜が下から手を伸ばしてきて私の頬に触れた。
「……ごめんなさい」
「あれにはちょっと傷ついたぜ」
「それもだけど、ほんとに、知らなくて、」
仕事が忙しすぎて私のことを考える暇もないんだろうと思っていた。
忙しすぎるから私のことを考えないようにと耐えていただなんて。
……知らなかった。
怜が私を日本に連れて帰ろうとするまでに思いつめていただなんて。
私にプロポーズの続きまでしてくれようとしてたのに、私ったら自分のことばっかりで―――
「ごめんね、ごめんなさい……」
「おいおい」
怜が焦ったように半身を起こした。
「泣くなよ。責めるつもりで言ったんじゃない」
「でも、」
背中に両手を回されそっと抱きしめられる。
「でも、怜はいつだって私のことを助けてくれたのに、私、」
伯父のしたことでE社からの火の粉が私にまで降りかからないようにしてくれたことも
原スタジオで働けるように後押ししてくれたことも
プロの写真家になりたいという夢の後押しをしてくれたことも
スランプの時に私の仕事に興味を持ちそうな人たちを紹介してくれたことも
怜はいつも、本当にいつも私のことを考えてくれていたのに。
「怜が辛かった時、私、そばにもいられなくて、なにもできなくて……」
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