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「だからそうじゃないって」
私を抱きしめる力が強くなった。
「さっきも言ったろ? 理佐がいてくれるだけで、俺には力になった」
そして頬に怜の唇が触れるのを感じた。
「確かにそばにいてほしいと思ったことは何度もあったけど、でも一方であの時無理に連れ帰ってたらそれはそれで俺の方もあとで後悔したと思う」
「……どうして? 」
「理佐に写真の夢を追及してほしいのも俺の本心だから」
「れいぃぃぃ」
バカ。もう私の事ばっかり。
もうダメだ。頬をつぃーと雫が流れていく。
なのに。
「それに理佐だってあとになって、“なんであの時これからっていうチャンスをフイにしたのかしら!” って思ったかもしれないし」
「えー、なにそれ」
思わず彼の顔を見ると口の端に笑みを浮かべていた。やだ、突然からかいモード?
「真面目な話、あの時俺に日本に来てくれと言われたら理佐はものすごく迷ったと思う」
……確かにそれはそうかもしれない。あの時は新人賞を獲って、まさにこれからと意気揚々としていた時だっただけに。
でもそれで怜だけが辛い思いを……
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