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「彼、サン・ルイ島に住んでいるんだ」
「みたいだね。行ったことあるの? 」
「うん。ノートルダムとかがあるシテ島のとなりにある小さな島だよ。パリのど真ん中にある割には観光的なものがないんで、けっこう静かな住宅地みたいな感じ」
さすが何度もパリに行ったことあるだけあって、綾菜はよくわかってるな。
「でもあそこにあるのはほとんど高級アパルトマンばかりだと思う。そんなとこに住んでる理佐の彼氏って、いったいナニモノなの? 」
ほんとに、彼はいったい何をしている人なんだろう。
思考はまたメニューから外れてあの夏の日々へと辿りつく。
ううん、彼が何をしている人だって、今はそんなことはどうでもいい。
会いたい。
会いたいよ。
喉に何かせりあがってきそうな予感がして、慌ててメニューに目を凝らした。
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