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今、何て言ったの?
聞き返そうとした私の頬を怜の両手がふわっと包みこむ。
「理佐」
初めて見た時に強く印象に残ったあの鳶色の瞳が、まっすぐに私を見つめている。
「メリー・クリスマス」
そう囁かれた次の瞬間には、呼吸を奪われた。
すぐに離れた彼の唇は、間をおかずして今度は深く私の唇を包み込む。
トントン、と私の歯の並びを舌先で軽くノックしたかと思うと、入り込んできた怜の舌が私の舌を探し当てた。
「んっ……」
ああ、怜のキスだ。
「あふっ」
我を忘れ始めた頃、『すみませんが、通してもらえませんかね』 と彼の背後から声がかかった。
その声に怜が身を離して振り返ると、初老の男性が苦笑混じりに立っていた。
私たちは階段への道を塞いでいたのだ。
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