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自転車に戻ろうとすると、
「お兄ちゃん」
聞き覚えのある声で呼ばれた。
振り返ると、赤いワンピースを着た女の子が、俺のスマートフォンを持っている。
「ポケットから落ちたよ!」
無邪気な笑顔に、ふっと笑みがこぼれる。
俺はしゃがみ、頭を撫でた。
「ありがとう。……この前も」
女の子は「ん?」と首を傾げる。
「暗くならないうちに帰りなよ」
もう一度頭をぽんぽんと撫で、スマートフォンを受け取った。
「私も行くー!」
女の子が元気にみんなの元に走っていく。
バカもたまには悪くないな……。
俺は鞄の中からすっかり使わなくなった時計を取り出し、川に向かって放り投げた。
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