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何が起きたのか分からないまま、
「痛たたた……」
ゆっくり体を起こす。
足も手も脇腹も痛いが、それほど大した痛みではない。
「大丈夫ですか!?」
さっき悲鳴を上げたと思われる女性が駆け寄ってきた。
「はい……まぁ」
散らばった缶ジュースとダンボール箱を見て、ようやく自分の身に起こったことを理解する。
台車に乗った、ジュースが入っている大量のダンボール箱に、俺は突っ込んだらしい。
「何があった!」
近くのお店からおじさんが出てきた。
「お父さん……私、大変なことを……」
「だから言っただろ! いっぺんにこんなに運んだら危ないって! 早く救急車!」
「俺は大丈夫です」
救急車を呼ぶほどの怪我はしていない。
意識もはっきりしている。
「そうですか……? だったら車で病院まで送らせてください。治療費も、私らが負担させてもらいます」
おじさんは頭を下げ、また店内に戻った。
「本当に、すみませんでした」
女性も深々と頭を下げる。
「俺が注意してなかったのも悪いんで」
と言いつつ、俺は、じんじんと痛む自分の右足を見つめた。
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