114人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
「おい馬鹿、危ねぇだろ」
「虎太郎にはぜったいに、幸せを運んであげない」
「怒るなよ。また腹減るぞ」
「減った。何かつくって」
「……ったく。じゃどっか停まるぞ」
「待てない」
そっぽを向いて拗ねることりの頭を、虎太郎は後ろからがしがしと撫でた。
「何食いたいんだよ」
「コトリライス」
「……仕方ねぇなぁ」
虎太郎は、声を上げて笑う。
ことりは、そんな笑い声聞こえないとばかりに何も言わず
密かに、手に持った小鳥の旗を握りしめた。
「本当に青い鳥だったら良かったのに」
まるで独り言のように零したひと言は
音になるかならないかのギリギリの音量で、エンジン音に吸い込まれる。
「――厄介ごとしか運んでこなくても、我慢してやるよ」
そして、虎太郎の返事もまた、吸い込まれていった。
MENU2 おわり
最初のコメントを投稿しよう!