MENU3:なまえのない薬

2/52
114人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
「先生、川原先生! 太一くんがまた、脱走しました……!」 「何だって……? なんでちゃんと見ておかないんだよ!!」  福岡県北九州市、門司区。  “門司港”と言えば、昭和モダンの建物が立ち並ぶ街として有名だ。  友好記念図書館や三井倶楽部、レトロ館。明治24年に建てられたJR門司港駅も、改修を重ねながらも当時の姿を維持しており、その観光ルートのひとつに含まれる。  そんな門司港で、一箇所だけ時代を間違えたような白い建物、門司総合病院。  川原勢次はそこで、半年前から、主に小児がんを専門として働き始めた。  この病院は特に小児がんに力を入れていて、専門病棟もある。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!