MENU1:砂糖を憎む姉、砂糖を夢見る妹。

10/43
前へ
/168ページ
次へ
「麻美、これ大丈夫なの!食べられるの!だってお砂糖使ってないチョコレートで作ったんだよ!ケットウチ?が、上がらなければいいんだよね!?食べられるんだよね!?」 「衣美……」  ほんの一瞬、麻美の目が揺れた。 けれど、すぐに満面の笑みでムースを受け取る。 衣美は、その時わずかに感じた違和感なんて、すぐに忘れてしまった。 「食べようよ、一緒に誕生日やろう?」 「うん!!衣美、ありがとう……!!」  甘いムースをおいしそうに食べる麻美の姿を見るのは、 本当に、本当に久しぶりだった。 油断すれば泣きそうになってしまい、衣美は必死で堪える。  麻美は幸せそうな顔で何度もありがとうと言い、 まるで競争するように、二人でムースを頬張った。  ――突如、麻美の呼吸のリズムがおかしくなってから、 病院で母親から全力の平手が飛んでくるまでの間のことを  衣美は、あまり覚えていない。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加