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「麻美、これ大丈夫なの!食べられるの!だってお砂糖使ってないチョコレートで作ったんだよ!ケットウチ?が、上がらなければいいんだよね!?食べられるんだよね!?」
「衣美……」
ほんの一瞬、麻美の目が揺れた。
けれど、すぐに満面の笑みでムースを受け取る。
衣美は、その時わずかに感じた違和感なんて、すぐに忘れてしまった。
「食べようよ、一緒に誕生日やろう?」
「うん!!衣美、ありがとう……!!」
甘いムースをおいしそうに食べる麻美の姿を見るのは、
本当に、本当に久しぶりだった。
油断すれば泣きそうになってしまい、衣美は必死で堪える。
麻美は幸せそうな顔で何度もありがとうと言い、
まるで競争するように、二人でムースを頬張った。
――突如、麻美の呼吸のリズムがおかしくなってから、
病院で母親から全力の平手が飛んでくるまでの間のことを
衣美は、あまり覚えていない。
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