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「虎太郎さん、これ4個目だよ。今月」
「だな」
更に南へ向かって走るランチカーの運転席で、
虎太郎はからかうように笑う。
ことりの手には、山のように大きなモンブラン。
誕生日おめでとうと書かれたプレート付きだ。
「栗が旨い季節だしなぁ。なんでお前の名前、栗子にしなかったんだろうな?」
「今、栗がおいしい季節なの?」
「おいおい。お前本当に何も知らねえんだな。
つーか、あのフォーク置いて来て良かったのかよ。お前の愛用じゃねえか。新しいやつ買って行くか?」
「いい。衣美の方が、必要だから。それに私にはまだコレがあるし」
ことりはそう言うと、モンブランの頂点にサーバースプーンを突き立てた。
「もはや掘削工事だな」
「あ。栗がまるごと入ってる」
「旨いぞ。和栗だ」
「虎太郎さんも食べる?」
「は!?いや待て、こと……!」
再び顔中クリームまみれになった虎太郎。
車内には、ことりの笑い声が響く。
「虎太郎さん、ありがとう」
「バーカ」
虎太郎の穏やかな笑い声も、それに重なった。
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