プロローグ

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10月に入ってもはや3回目となる誕生日ケーキ。 ことりは大きなフォークでその真ん中を豪快に指し、思い切り大きく掬う。 「おいおい。馬鹿。そんなに口に入んねーだろ」 「虎太郎さんも食べる?」 「は!?俺は運転ちゅ……おい、やめ……!」  強引に口に押し付けられたケーキ。 虎太郎の口の周りは、当然ながらクリームだらけになった。 「あはは!!」 「お前ほんと、どうしようもねえな!見ろよ対向車がすげー目で見てんじゃねえか!」 「虎太郎さん、きたない」 「貴様」  ことりはフォークに残ったケーキを口いっぱいに頬張る。 やわらかいクリームと苺の酸味の絶妙なバランスが、一気に気持ちを高揚させた。 「虎太郎さん」 「なんだよ。もう余計なことすんなよ」 「ありがとう」 「あ?」 「ありがとう、虎太郎さん」  運転席から伸びた手が、ことりの頭を雑に撫でる。 ことりはぐしゃぐしゃになった髪を気にも留めず、二口目を頬張った。
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