MENU1:砂糖を憎む姉、砂糖を夢見る妹。

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ペン状の細い注射器の中はインスリンというホルモンが入っている。 それは本来、すい臓から分泌されるべき血糖値を下げるホルモンだ。 糖尿病が発症すると、インスリンは正常に分泌されなくなる。 血糖値が上がり高血糖になれば、呼吸困難や脱水症状など様々な症状を起こし最悪の場合は死に至るらしい。 その話を両親から聞いた時は、殴られたような衝撃と共に、目の前が真っ暗になった。 あの日のことは到底忘れられそうにない。 そして、そんな恐ろしい病気になってしまった妹の麻美が習慣とせねばならなくなったことは、インスリンの注射だけではない。 食生活の管理だ。 つまり彼女は、口にして良い食物が極端に限られる。 血糖値を上げすぎない為には、まず糖質を含む食品を控えなければならない。 糖質は、いわゆる三大栄養素のひとつ“炭水化物”に多く含まれ、つまり一般的に主食とされる、米や小麦、麺類すべてに多く含まれるのだ。
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