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◇ ◇ ◇
少女のように年甲斐もなくはしゃぐ茉莉花の姿は、あっという間に消えた。
ひとり、病と戦っていた。
勝ち目のない一方通行の戦いだ。
行き着く先は明るさのかけらもない未来。
いつまで続くのだろう、こんな日々は。
誰か早く終わらせてくれないか。
いや――終わらないでくれ。
私はまだ、まるで宴の前の、仕度に躍起になってばたつく舞台裏のような高揚感のただ中にいたいのだ。
私に救いはいらない。
どうか彼女を助けてくれ。
それが叶わないのなら、安らかな眠りを、痛みから解放してやってくれ。
何故、茉莉花が苦しまなければならないというのだ!!
彼の思いに構わず世間は動く。慎は求められる職責を果たさなければならない。週に一度開かれる定例の勉強会もそのひとつだった。この日、定例会も終盤にさしかかった頃、武は慎の発言を途中で遮って言う。
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