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「また今度ゆっくり話そう。私でよければね」
「ええ、ぜひ!」
「政は怒るだろうが」
「怒らせておきます」
心の底から思いを込め、慎は深く頭を垂れた。
数日後、訪れた病室では久方ぶりに顔色良くはしゃぐ茉莉花がいた。
慎さん、あのね、今日誰が来たと思う?
聞いたら驚くわよ、あのね、政君のね、奥様だったの! 奥様よ、奥様!
とても良くできたお嬢さんでびっくりしちゃった!
結婚したとは聞いていたけど、いざ目の前にすると年月の経つ早さを実感するわ。
慎さんの差し金でしょ? だめよ、もう、私のような者の所へ寄こすなんて。
でも楽しかったわ。子供はいつまでも小さいと思っていたけれど、そうじゃないのね!
驚いたわ。だってあの政君よ、丸いお習字を書いていた男の子が!!
一気にまくし立てた茉莉花は紅潮した頬の熱も冷めやらないまま、つぶやいた。
「まだまだ小さいと思っていたけど……子供は成長が早いのね。月日って人それぞれに相応に流れていくものなのかしら。あっという間のようでいて、ものすごく昔のことのようにも感じる。もう――今がいつか、良くわからなくなっちゃったわ」
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