魔導書

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 それはパリン、という音が聞こえそうなほどの立体感を伴って、バラバラに割れていった。  美しく散らばっていく光の欠片たち。  それを見ていたフィリアは、光ってこんな風に砕けるもんだっけ? という的外れな疑問を覚えた。  そして、"ソレ"は砕けた光の檻から現れた。  "ソレ"は、例えるなら牛の頭に熊の身体をくっつけたようなモノだった。  それが、二本足で立っている。黒光りする角と全身に生えた橙色の毛が存在感を主張しており、右手には1mほどの巨大な斧が握られていた。  鼻から一定感覚で息が噴出され、そのたび胸が収縮している。 「ミノタールスだ!」  突然、カザンが叫んだ。 「牛の頭と熊――というより、筋骨隆々とした毛むくじゃらの男の体をくっつけたような容姿……文献と違って、毛色は橙色なんだな。それはつまりこの家系、引いては母親が赤毛である可能性を示している。赤毛の牛というのも聞いたことがないからな。となると、親にあたると云われている女王バシトゥエは、エンバシ地方よりの人間の可能性が……」 「せ、せんせい……カザン先生っ!」
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