魔導書

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 まくし立ててこの上なく嬉しそうなカザンとは対照的に、フィリアはミノタールスから目を離さずに――離せずに、カクカク震えていた。  おまけに半泣きで。 「なにかね、フィリア君? 私は今少々忙しいのだが」 「だ……だって、ミノタールスですよ、みのたあるす。あの……伝説上の、かいぶつ。そ、それが今私たちの前に出て……」  グァウッ、と一声鳴いて荒々しく体を揺するミノタールス。 「きゃうっ!」 「そうだとも、ミノタールスだ。私が望んだ通りに召喚された、君の言う通りの伝説上の怪物だ。普段普通に普遍的な生活を送っていたのでまずお目にかかれない、それこそこの世の常識を超越した現象だ。私たちは今、その一端に触れているのだ! さぁフィリア君、思う存分感激しようじゃないか!」 「そ、そんなこと言ったって……」  がふがふっと荒い息を吐き、ミノタールスは前傾姿勢を取って斧を後方に構えた。
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