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その中心で不気味に揺らぐ蝋燭の前に、一人の男が眉根をひそめて座っている。
神経質そうな四角い縁無し眼鏡に、長い白髪(はくはつ)が肩にかかっている。
肌も色白で、頬やアゴの輪郭も相当に細い。
そしてその全身を、清潔で大きめな白衣がマントのように覆っていた。
その不健康そうな博士風の男は、椅子に腰かけて手元の文庫本に視線を注いでいた。
足を組み、片手は口元にやり、双眸を細めて瞬きひとつする様子もなく、きつく、じっと。
声をかけたにも関わらず男が反応する様子がなかったので、フィリアは再び、
「カザン先生、例の魔導書――」
ぐりん、と男の目玉が回転してフィリアを凝視した。
細められていた瞼も爬虫類のように不自然に見開かれ、その蝋燭に不気味に照らされて青白い肌はフィリアに幽鬼を連想させた。
「あ―――」
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