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「さて、静也。方法は見つかったか?」
優は俺がきっちりドアを閉めるのを見届け、近くにあった椅子に座りながらそう俺に問う。
本当に細かい所までよく気づくものだ。
「いや、全然だな」
俺は苦笑いしながらそう返す。
今話しているのは、俺の将来の夢についてだ。まぁ、夢も何も成田家の長男として生まれた以上、親の後を継ぐしか道はない。
そして、実際そのための英才教育も受けている。
だが、俺がなりたいのは"考古学者"なのだ。
だからどうにかして考古学者になる方法を模索しているが、現状は……まぁ、な。
親に素直に言ったら十中八九反対されるだろうし、下手したら考古学に関わること全て禁止される。
だからといって何も言わずにやろうとしたら、まず途中で連れ戻されるだろう。
さらに、限りなく低いがどうにかなる確率もあと三年後、俺が高校生になる頃には完全になくなる。
要は手詰まり。そして時間もそれほどない、というなんとも絶望的な状況なのだ。
「……なぁ、静也。お前は何処まで犠牲にできる?」
「……はぁ?」
どうにもできない現状を改めて自覚し、忸怩たる思いでいるところにいきなり言葉が放り込まれる。
が、全く意味がわからない。
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