そうだ、演じよう。

そもそもは

「わかった。まぁ、案と言っても"静也がやること"は、性格悪くて出来ない奴を演じるだけなんだけどな」

さっきまでの威圧感が嘘のように消え去った優は、ふざけたように笑ってそう言う。

「……それは、どうなんだ？」

「いや、こう一見現実味がないような感じするけど、真面目にやれば結構イケると思う」

微妙な気持ちで優に訊ね返すと、優は苦笑いを浮かべながらそう言う。

言われた内容を

むしろそんなことしたら逆に監視がキツくなって……ん？。

キツくなった先にあるのは『こいつに継がせたら不味い』という評価。

確かに両親は家族への愛情を持っている。しかし、両親は家族のことより仕事のことを優先するだろう。

そのことに俺も海も不信感などない。むしろ誇りにすら思っている。

けど、それを利用したらどうなるか。

短期間に性格が変わることは中々ないが、そこは中学生。思春期だの反抗期だの何だので、理由付けは出来る。

だが、それがまた良い方向にいくかどうかは別だ。普通の親なら子供を信頼して待つことが出来るのだろう。

だが、俺の親は？

仕事を優先するからこそ、そんな後のない危ない賭けは出来ない。そして、俺がある程度の年齢(高校生になるくらい)までそのままだったら"仕事のために"俺を見限り、海に後を継がせるだろう。

そうなったら、俺は自由に動くことが出来る。

まぁ、流石にここまで上手くはいかないだろうが、今まで考えてきた案のどれよりも成功率が高そうだ。