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その後のことはあまり覚えていない。
何故あの人はあんなに嫌われているのか。そもそも周りの人たちが言っていた事は本当なのか。
噂通りの人ならば何故僕を助けてくれたのか。
困っている人を助ける事が出来る人ならば、あの顔で権力も持っているのだ。多少出来ない所があってもこんなに嫌われることはないのではないか。
だったら何故あの人はあんなに嫌われているのか。
もう、堂々巡りだった。
「鋼、行くわよ」
と母に声をかけられてビックリした。
周りにいた人は帰り支度をしていて、入学式などとっくに終わっていたのである。
さっきもだが、どうやら僕は考え始めると周りの事が飛んでしまうらしい。
「わかった。今用意する」
僕は荷物を椅子の下の籠から取り出し、肩に掛ける。そして母と父の方を向き、用意ができた事を伝える。
「じゃ、帰るか」
父がコートを着ながら言う。
…もう4月なのにコートを着ている父は、寒がりなんだろう。
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