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短絡的な結論に声の主は至ったようだ。愛が欲しい。それは間違っていない。しかし、こんな取り柄もなく、汚れてしまった自分を誰が愛してくれるというのか。そうとも、愛してくれる者などいるわけがない。
――大丈夫。これからは君は世界中の人間全ての愛を受けられる。
馬鹿馬鹿しくなって少女は笑った。世界中の人間から愛されるなど、おとぎ話でも不可能だ。どれだけ性格が良く、外見が良く、社交的で人に好かれようとも、嫌う人間は必ずいる。
こんな声に惑わされるなど、なんて愚かなのか。いや、この声の主は自分なのかもしれない。誰かに救いの手を差し伸べて欲しくて生み出した、イマジナリーな声。
――君の望みは叶った。全ての人間がこの瞬間から君を愛するよ。幸せになれるとは限らないけれど、終わりの来るその日まで。さようなら。
勝手な別れを告げて声は消える。喧騒が元の音量を取り戻していく。そうして感じられる雰囲気が先までと異なることに気づいた。違和感を抱き、下を見る。
自殺の時を今か今かと見ていた視線が、カメラが、そこにはなかった。誰もが瞳に涙をためて、懇願するように少女を見ているのだ。
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