プロローグ

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「これからが本番だね」  授業が終わり放課後になると、クラスメイトの一人が近づいて来てそう言った。本番。すなわち虐めのエスカレートである。死刑宣告にも等しい言葉を言い渡された少女は逃げるように家へと走った。  自宅であるアパートに着くと、うずくまって震えた。最後の頼みの綱であった教師は助けてくれなかった。助ける素振りすら見せずに見捨てたのだ。明日から絶望の日々が待ち受けている。何をされるのか、想像しただけでも身体が震え、涙が溢れた。  虐められたくない。学校に行きたくない。虐められたくない。学校に行きたくない。ぐるぐると感情が混濁する。不登校という選択肢を選べたらまだ、救いはあったというのに。少女にはそれすら許されない。  気づけば日が暮れていた。そうしてハッとする。晩御飯を作っていない。風呂も沸かしていない。帰ってくる前に全てを終えていないといけないのに。  少女が立ち上がるのと同時にガチャリと玄関扉の開く音がした。「あ、ああ……」と言葉に鳴らない声を少女は漏らした。
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