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びゅうと風が吹き抜ける。はためくスカートは下から見れば、言わずもがな丸見えである。しかし少女はもうそんなことは気にしない。今日で全てが終わるのだから。
あの日を境に少女に対する虐めはエスカレートした。ストレス解消のために殴る蹴るは当たり前。万引きに始まる犯罪行為の強要や、果ては援助交際まで強いられた。
そのことをクラスメイトの手によって知った父親はいつも通りに暴力を振るうと、彼女を犯した。
逆らうことなどできず、ただされるがままに全てを受け入れた。抵抗することで状況が悪化することを学んでしまったからだ。
まさしく生き地獄。いっそ死んで地獄に落ちてしまった方がらくなのでは、と彼女に思わせるほどに。そうして現在に至る。
少女は通っている高校の屋上の縁に立ち、野次馬たちを見下ろしていた。その後ろには必死に説得を試みる教師と警官がいる。
警官はまだしも、一度は彼女を見捨て、行われる虐めを黙認してきた教師がなぜ説得するのか。答えは簡単だ。こんなところで自殺されては学校の名誉に関わるから。それ以外に何がある。柵を越えようとしないのがその証拠だ。
少女の制服の胸ポケットには全てを記した遺書がしまってある。自分がされてきた全てを世間が知るように願いを込めて書いたものだ。
自分を傷つけた者たちへ。自分を追い詰めた者たちへ。自分を見捨てた者たちへ。そんな全てに対して、最期に一矢を報いるために。
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