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「わかりました。依頼者には、そこは伏せておきますから、安心してください」
他人から見えない――。奈々子の身に起きている理不尽な体験は、三条には想像することしかできないが、その想像以上の苦労や孤独感があるのだろう。
事実をありのままに報告するのが探偵業なのだが、それは一般論であり、今回は無理だろうと三条は常識をわきまえていた。
「話してくれて、ありがとうございました」
一礼して去り際、三条は、最後に一瞬、ベンチにすわる奈々子の姿が見えたような気がした。
でもそれは公園にまで届いた、街を彩るイルミネーションの光が見せた錯覚かもしれなかった。
先野光介、職業は探偵だ。
調査が終わればそれを報告するのが仕事なのだが、ありのままを報告するのに気が重いときもある。今回もそうだった。
十二月も押し迫って、今日が仕事納めだった。こんな報告で一年が終わるのは、なんともいえないむなしさを感じた。
「そうでしたか……」
事務所ですべての報告をすると、依頼者の所田敬一は大きくうなだれた。
気落ちする客から借金取りのように依頼料をふんだくらなければならないのだから、先野は気の毒に思えて仕方がなかった。
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