弟の恋

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 明二はちょっとはにかんで、 「あんないい女性(ひと)はいないよ。完璧。ぼくにはもったいないぐらいさ」 「へえ……」  にぎり寿司を頬張りながら、敬一は感心した。恋は盲目と言うし、しかも明二にとってはたぶん初めての恋で、おそらく相手を過大評価してしまっているのだろう……と思った。 「写真、あるのかい?」  敬一がそう言うと、明二の表情が若干曇った。 「あるけど……いや、ない」 「どっちなんだ?」 「じつは……、他人(ひと)には見せないでくれって言われたんだ」 「おれたち、兄弟だぜ」 「うん、そうだけど……」  言葉を濁す明二に、敬一は折れた。 「ま、いいか。そのうち見てもいいようになるだろう」  なんの事情があるのだろうか。写真を見せたくないなんて、思春期じゃあるまいし。年齢的にもこのまま結婚ということもあり得るなら、いつか本人に会えるかもしれない。  それとも、他になにか別の理由でもあるのだろうか。相手が男、なんてオチじゃあるまいな……。
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