奈々子

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 次の日――。先野は事務所で、出勤してきた三条愛美にことの顛末を打ち明けた。 「残念ながら、ターゲットに恋人はいない」  最後まで話し終えて、先野はそう結論した。事務机に両肘をつき、組んだ手を口の前にもってきて、 「意外な調査結果だったぜ……」 「そうだったんですか……」  三条はうなずいた。 「依頼者に報告しなければならないが、まさかこんなオチだったとは思うまい」  深いため息をつき、先野は机の上のパソコンの電源を入れ、報告書の作成に取りかかる。 「ということで、この件は決着した。あとはおれが依頼者に対応するよ。ごくろうさま」  パソコンの画面を見つつ、手をひらひらと振る先野に、わかりました、お願いします、と三条は言った。  それから何日かたった夜、三条は街にいた。  クリスマスイブだった。しかし、クリスマスイブを恋人とすごすためではなかった。  たった一人で街に出て、ターゲットの尾行をするために――。  先野に、調査の終了を告げられていたから、これ以上の尾行の必要はなかったが、果たしてそうか、という疑惑があったからだった。  先野と共に尾行していて、たしかに所田明二は見えない相手とのデートを楽しんでいるように見えた。
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