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少年は夜が空けるまでその場を離れなかった。
「なんで、お母さんが殺されなきゃならないんだ……」
叫んだ所で母親は戻らない。
少年は喉が潰れ、涙が枯れていた。
そこへ、ゼウスローゼン帝国の兵士が数人やって来た。
「あーあーあああ!また、派手に殺られてんなあ!ぎゃはははははははははははッ」
少年の隣で兵士達は蚩う。
彼の母親の無様な死に様を見て蚩う。
そこには正義も悪も無かった。
これが民を護る者達の在り方なのか?
誰もそれに触れようとしない。
ここは死体が捨てられる場所。
今更どう足掻こうと、何も帰って来ないのだ。
「おい、坊主。悪い事は言わねぇ。早くここを出た方が良いぜ!お前もこうなっちまうからな!!ぎゃははははははは」
少年は兵士らを睨み付け、突進した。
だが、それはいとも簡単に受け止められてしまう。
そして、ひと蹴り。
小さな少年の身体は、腐った死体の山に吹き飛ばされた。
笑いながら兵士達は立ち去る。
少年は蹴られ、息が出来ずにいた。
そして悪臭を思いっきり吸い込み吐瀉する。
ここは地獄。
泣き叫んだ所で誰も助けてはくれない。
彼を助けてくれた人は、既にこの世には居ないのだから。
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