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予告映画
足を怪我したので、連休は家にこもることになった。だが、俺は本来アウトドア派なので、家にいると時間を持て余してしまうばかりだ。
それを知っている弟が、暇つぶしにと、何枚かのDVDを借りて来てくれた。
普段、TVもろくに見ない方だが、他にやることがない。それに、俺の好みを知っていてくれるので、借りて来てくれたのは派手なアクション映画ばかりだ。
おかげで楽しく時間を潰せたが、それでも何作も見ていると疲れたらしく、途中でうたた寝をしてしまった。
気がつくと、映画はもう終わっていて、選択画面の画像が映し出されていた。
覚えている所からもう一度見直そうか。一度はそう思ったけれど、さすがに眼が疲れている。いったん休憩しよう。
そう思い、リモコンのボタンを押したら、画面は切れずに別の映像に切り変わった。どうやら停止と間違えて、別作品の紹介予告を選んでしまったらしい。
すぐに消そうと思ったが、流れた予告が面白く、俺は画面に見入った。
アクションじゃない。ホラーだ。派手に血が飛び散るスプラッター系じゃなく、心理的に怖いって奴かな。
モノクロに近い色合いで、音声もほとんどない。正直、映画の予告なのにこれでいいのか? ってくらい、話の展開もよく判らないものだけれど、妙に意識が引きつけられる。
ほんの数分の予告映像。それが終わるまで、俺はろくに瞬きもせずひたすらTVを見つめていた。
この映画、いつ公開なんだろう。見に行きたいな。
あるいはもうとっくに公開されていて、DVDが出てるかもしれない。
ともかくきちんと見たいから、タイトルを確認しておこう。
思い立ち、俺はもう一度予告編を見た。けれど、何作か紹介された作品の中にさっきのホラー映画の予告がない。
「ただいまー。どう? 少しは暇潰せた…って、何やってんの?」
何度も予告ばかりを見返しているところへ弟が帰って来て、俺はさっき見たホラー映画のことを話した。けれど弟は首を捻るばかりだ。
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