10人が本棚に入れています
本棚に追加
四ノ宮医師の冷やかしにも、梛音は少しも浮かれる様子がない。
自分の気持ちを押し殺すかのように、その顔には表情が無く、そこから感情を読み取る事は困難に見えた。
「期間限定さ、大した意味は無いよ。」
皮肉げに梛音は笑った。
そして自らに言い聞かせるかのように、言葉を続ける。
「憐はゲイじゃない。心の傷が癒えればきっと、普通に女性を愛せるようになる。僕は所詮、それまでの一時凌ぎの場所でしかないし、そうあるべきだと思っている。まっ、その時までは精々、楽しませて貰うさ。」
「楽しむ、ですか…」
四ノ宮医師は、『貴方、その割には泣きそうですよ。』という言葉を飲み込んだ。
そんな事を言わなくても、 本人が十分解っているだろうからだ。
最初のコメントを投稿しよう!