ほととぎすの仮宿へようこそ ②

雨降って、さて地はどうなる？

びっくりして聞く俺に、四ノ宮先生は含み笑い的な表情を浮かべて応える。
梛音とはまた違う、円熟した大人の男の美しさが溢れていた。

「ええ、そろそろいい頃合いかもしれませんね。ふふふ、これから来る患者さんは貴方もよーくご存知の方なんですよ。でも、私が良いと言うまでは隠れていて下さいね。」

訳が分からず立ち止まってしまっている俺を、四ノ宮先生はやや強引にカーテンの向こうへと追いやってしまった。

今から来るのは一体誰なんだ？
人の秘密を暴く片棒を担がされそうで、俺は酷く落ち着かなかった。

コンコン、ドアがノックされた。
と同時に、四ノ宮先生の返事も待たずにその相手が中に入って来た。
俺からは相手の姿は見えないが、ドアの開閉の音とカーテンの揺れから判断出来る。

「おやまぁ、はしたないですね。許しもなしに入って来るとは。」

いつも紳士的過ぎる位丁寧な先生の、珍しく意地の悪い対応に、その人との並々ならない関係が伺い知れた。
どんな関係の人なんだろう。