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手近にあった服を素早く着つつ、俺は梛音に視線でお伺いを立てる。
返事はマッハで帰ってきた。
「えー、憐の手料理がいいよ。何でもいいからさ~、作ってよ、ねぇ。」
以前の俺ならこんな我が儘には呆れていただろうな……。
しかし今は満更でも無かった。
「ほんとに有り合わせしか出来ないぞ。いいのか?」
「うんっ」
ほら梛音の嬉しそうな声を聞くだけで、俺らしくなく、口が緩んでしまう。
俺はざっと冷蔵庫の中を確認する。
メニューは出汁巻き玉子と味噌汁とサラダってとこか、と手早く支度を始めた。
背後に梛音の視線を感じる。
嬉しいような、それでいてむず痒いのような不思議な感覚だった。
そろそろ、朝食の準備も終盤を迎えた頃、梛音の叫ぶ声が部屋を木霊した。
「ああ~っ、今日は絶対に落とせない授業があるんだった~。」
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