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アメリカ、ウィスコンシン州ミシガン湖の西岸。
青く澄み渡る空の下、ネイティブ・アメリカンの言葉で『美しい土地』を意味するミルウォーキーに、海里と映像監督の野村、カメラマンの北川、アシスタントの山原、ヘアメイクの静、スタイリストの航、哲生、夕美、亜季。
そして海里の目利きに適った現地スタッフが集結し、宮殿を模したホテルの庭園を貸し切ってのMV撮影が行われた。
『Labyrinth』発売後、続けて収録されたシングル曲は、今から6年前、ジオフロントのクリスマスパーティーで大和が歌った『Dear You…』だった。
公に出すつもりの無かった一度きりのシークレットソングを、アルバムの中の1曲としてではなくシングル曲として出すのには意味があった。
いつまでも色褪せる事無く、色鮮やかに息づく『想い』が存在する事――
それを形にしたかった。
庭園には、小規模ではあるが大地から自然と湧き出る泉があった。
その水面に浮かべた小舟に、航が用意した、ウエディングドレスを思わせる純白のワンピースを着た沙蘭が座る。
「そのままカメラ目線でいてくれるだけでいいから。
もし間がもたないなら演じてくれてもいいよ。
ただし、あまり大きく動かないで」
大和は、演じる事を仕事とするプロの女優でさえ困ってしまうような漠然とした注文を出した。
岸にいるのはカメラマンの北川とアシスタントの山原。
それから静と航、音響担当のロバート、の5人だけ。
大和を含む残りのスタッフは全員、少し離れた場所にある屋外レストランのテラスからモニターを見つめていた。
『スタート!』
野村の声を合図に『Dear You…』のイントロが流れ出した。
6年前のジオフロント――
記憶が眠りから目覚め、モノクロのページが浮遊する。
沙蘭がそっと目を閉じた。
――彼女の記憶の中に。
アコースティックギターで弾き語りをする大和がいた。
(ギター1本のアレンジだった。
それに…)
みんながいた。
嶺がいた。
優しい顔で笑ってた。
大好きな笑顔。
(見てくれてるかな)
(ここが見えるかな)
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