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片側3車線の大通り。
時折、車のヘッドライトが走り抜ける、日中の喧騒とはまるで異なる顔をしたオフィス街。
その高層ビルに囲まれた薄墨色の長四角の空に、細長い三日月が貼り付いている。
正しい遠近法で描き表わされたような一画に佇むカフェバー『Baden-Baden』(バーデン・バーデン、通称BB)の前には今夜も大型バイクが並び、常連の男達が集まっていた。
「なぁ、昨日のコンパどうだった?」
「聞くな!
もう二度と行かねぇ!」
「何でだよ。
お嬢様女子大生だったんだろ?」
「女と名が付きゃ、み~んなお嬢様。
期待した俺がバカだった!
所詮、噂は噂。
信じる者は救われない!
会費1万5000だぜ?
金返せって言いたいよ、チクショー」
「要するに、ハズレ、だった訳だ?」
「まぁ、落ち込むなって。
期待に胸、躍らせたんだろ?いいじゃん、それで」
「そうそう。
出会いは一瞬の花火。
散ってナンボの世界だろ?」
「おぉ~、うまい事言うね。
座布団5枚!」
男達が笑う。
――もしかして、それって大西の持って来た話?最近、多いんだよ、そういうの。俺も去年の暮れ、あったんだ…。
なんて声も聞こえてくる。
2002年4月。
午後9時を少し回ったところ――。
1人の男の携帯に着信が入った。
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