第1章

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「ううん、こちらこそ忙しいところ ごめんなさい…おかげで、助かったわ… 長坂さんに私の携帯の番号教えてくれる?」 『了解!帰ったら飲みに行こうな…』 「お礼にご馳走するわ…連絡してね」 電話を切って、処置室を暖めた 「柚乃ちゃん…頑張ったね… もう大丈夫だからね… 柚乃ちゃんのお腹さわるね」 柚乃ちゃんは何も言わない 私はお湯で手を温めて 柚乃ちゃんのお腹をゆっくりさすった パンパンに張っている 「柚乃ちゃんはいくつかな?」 「3…さ…い」 「柚乃ちゃんは食べ物は何が好きかな?」 「いちご…」 「いちごが好きなんだぁ…じゃあ… お腹痛いの治ったらいちご食べようね だから頑張ろうね…」 柚乃ちゃんは私を見つめて頷いた そして 「ママ…」 じっと私を見つめたままつぶやいた ママが恋しいんだね… 私は柚乃ちゃんがとっても愛しくなって 抱きしめた… 「ママ…じゅーちゅ…」 「喉が渇いたのね…待っててね…」 私は廊下に出て自販機に向かった 途中、川岸のおばあちゃんがいた 「おばあちゃん、柚乃ちゃんは大丈夫 まだかかりそうだから家に戻ってていいよ あとで電話するから… 柚乃ちゃんはママが恋しいみたいだね…」 「柚乃ちゃんはママを知らないんだよ… 柚乃ちゃんを産んですぐに亡くなったそうなの」 「えっ…私を見てママって…」 「友達のママぐらいの人を見ると ママって言うみたい… 友達の真似してるんだね… ママがなんだかわからないのにね…」 「…」 私は何も言えなかった あんな小さくてママに甘えたいだろうに そのママでさえわからないなんて… 「優愛ちゃん、一度家に帰らせてもらうから 何かあったら電話してちょうだいね…」 「おばあちゃん、安心して任せて… 私が責任持ってお預かりしますから」 おばあちゃんと別れ飲み物を買って戻ると 涙をいっぱい溜めた柚乃ちゃんが 「ママ…」 私は柚乃ちゃんに駆け寄り 「ごめんね…寂しかったね…ごめんね… さぁ、麦茶飲もうね…」 柚乃ちゃんを起こして 紙コップに入れた麦茶を飲ませた… よっぽど喉が渇いていたのか ゴクゴクと飲んでいる 「柚乃ちゃん…ゆっくり飲もうね… お腹まだ痛い?」 柚乃ちゃんはゆっくり頷いた 「じゃ、早く治るように ちょっとだけお尻チクチクするね
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