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ピピッ ピピッ…
「お迎えの時間だ!」
家にいて時間の感覚が鈍ってしまった私は
何かとアラームをセットしている
仕事してる時は時計を見なくても
だいたいの時間はわかった
だけどいまは…
ちょっとソファで休んでると
いつの間にか眠ってしまったり…
何かに夢中になってると
時間があっと言う間に過ぎてたり
忘れちゃいけない事がある時は
スマホのアラームは必需品だ
余裕を持って部屋を出て
マンションの隣の保育所に向かった
「ママぁ~」
遠くから柚乃ちゃんの声が聞こえた
保育所の中から柚乃ちゃんが走って来た
「柚乃ちゃん!危ないよ、気をつけて!」
「柚乃ちゃ~ん、バッグ~」
後ろから先生がバッグを持って追いかけてきた
「先生、すみません!
柚乃ちゃん、先生からバッグもらって」
走って来た柚乃ちゃんはピタっと止まり
振り返って先生の方に駆け出した
「ゆののバッグ~」
「柚乃ちゃん、バッグを持って
玄関で待ってるお約束でしょ?」
「ごめんなちゃい…」
「でも、ママのお迎えで嬉しかったのね
次から気をつけようね」
「先生、すみません…」
「いえ…実は先日よその保育所で
道路の向かいを歩いてた人を
お迎えに来たお母さんと見間違えて
飛び出した拍子に車にはねられたって
事故があったんです…
うちも目の前が大通りなので
建物の中でお迎えを待つようにって
子供たちに話してたんです」
「そうなんですか…
柚乃ちゃん、これからは中で待っててね」
「は~い」
「柚乃ちゃんもいつもはちゃんと中で待ってたんですよ
やっぱりママのお迎えは嬉しいんですよ
妹さんの希愛ちゃんも大好きみたいですけど」
「そうなんですかね…
柚乃ちゃん、ママなんか嬉しいな」
柚乃ちゃんは私と手を繋いでニッコリ笑っている
「ケガはまだかかりそうなんですか?」
「だいぶ良くはなってきてるんですけど…
いまリハビリを頑張ってるんです
でも、まだ自分の事で精一杯で…
しばらく妹の送り迎えも続きそうなので
よろしくお願いします」
「明るくて子供が大好きな妹さんですね
うちに欲しいくらい…お母さんも安心ですね」
お母さんという言葉はまだくすぐったい
「ええ…」
「ママ、かえろ」
「そうね、先生今日もありがとうございました」
「バイバ~イ」
「柚乃ちゃん、また明日ね」
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