第10章

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ピピッ ピピッ… 「お迎えの時間だ!」 家にいて時間の感覚が鈍ってしまった私は 何かとアラームをセットしている 仕事してる時は時計を見なくても だいたいの時間はわかった だけどいまは… ちょっとソファで休んでると いつの間にか眠ってしまったり… 何かに夢中になってると 時間があっと言う間に過ぎてたり 忘れちゃいけない事がある時は スマホのアラームは必需品だ 余裕を持って部屋を出て マンションの隣の保育所に向かった 「ママぁ~」 遠くから柚乃ちゃんの声が聞こえた 保育所の中から柚乃ちゃんが走って来た 「柚乃ちゃん!危ないよ、気をつけて!」 「柚乃ちゃ~ん、バッグ~」 後ろから先生がバッグを持って追いかけてきた 「先生、すみません! 柚乃ちゃん、先生からバッグもらって」 走って来た柚乃ちゃんはピタっと止まり 振り返って先生の方に駆け出した 「ゆののバッグ~」 「柚乃ちゃん、バッグを持って 玄関で待ってるお約束でしょ?」 「ごめんなちゃい…」 「でも、ママのお迎えで嬉しかったのね 次から気をつけようね」 「先生、すみません…」 「いえ…実は先日よその保育所で 道路の向かいを歩いてた人を お迎えに来たお母さんと見間違えて 飛び出した拍子に車にはねられたって 事故があったんです… うちも目の前が大通りなので 建物の中でお迎えを待つようにって 子供たちに話してたんです」 「そうなんですか… 柚乃ちゃん、これからは中で待っててね」 「は~い」 「柚乃ちゃんもいつもはちゃんと中で待ってたんですよ やっぱりママのお迎えは嬉しいんですよ 妹さんの希愛ちゃんも大好きみたいですけど」 「そうなんですかね… 柚乃ちゃん、ママなんか嬉しいな」 柚乃ちゃんは私と手を繋いでニッコリ笑っている 「ケガはまだかかりそうなんですか?」 「だいぶ良くはなってきてるんですけど… いまリハビリを頑張ってるんです でも、まだ自分の事で精一杯で… しばらく妹の送り迎えも続きそうなので よろしくお願いします」 「明るくて子供が大好きな妹さんですね うちに欲しいくらい…お母さんも安心ですね」 お母さんという言葉はまだくすぐったい 「ええ…」 「ママ、かえろ」 「そうね、先生今日もありがとうございました」 「バイバ~イ」 「柚乃ちゃん、また明日ね」
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