第10章

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「でも…梨花が開業医の一人娘って俺に言い出せなくて… 言う前に子供が出来てしまった事で 俺を騙したようで申し訳ないって 何も言わず別れようとしたんだ…病院も辞めようとしてた… でも、お母さんが体調の変化に気が付いて お父さんが問い詰めたらしい… それでどうしようもなくなって俺の事話したって またそれで…俺に申し訳ないって泣いてるんだ… いつも他人の事ばっかり心配してるんだ… 俺はそこが梨花のいい所だと思うんだけど 今回はちょっとショックだった… 俺に言って欲しかったなって… ひとりで悩ませてたかと思うと…」 「じゃ、安心させてやれ… 俺が向こうの家に行って話してくるよ だから大丈夫だって言ってあげるんだ… 妊娠中は精神状態も不安定になってるはずだ お前が気をつけてあげないとな」 「父さん…ありがとう…」 「ねぇパパぁ…カナくんがお婿さんに行っちゃったら パパの病院はどうするの…? 誰が継ぐの?」 「誰が継ぐって…俺はまだまだピンピンしてるし いますぐどうなるわけでもないよ… それに俺は誰かを犠牲にしたくはないんだ だから俺の代で終わらせてもいいし… やりたいっていう人に任せてもいいと思ってる お前達が心配する事じゃないよ…」 「だってあの病院はおじいさまやおばあさまの 大切な病院でしょ…」 「あぁ…父さんが一生懸命頑張って建てたみたいだな 俺が高校生の時に亡くなったから 直接は何も聞けないままだったけど じいちゃんやばあちゃんから俺が医者になった時に 教えてもらったんだ… あの時、母さんがすぐに再婚した事で 俺と姉ちゃんは傷ついたし母さんとは疎遠になったけど いま思えば父さんの病院を守る為だったんだよな」
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