第10章

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「お父さんを愛してたんだね…」 「どうしたの…何かあった?」 「ううん…私もこの子は絶対産みたい… 絶対産む…」 「…雄平さんと何かあったの?」 「雄平さんとは何もないよ… 事故にあってから前にも増して 優しくしてくれるし 私の事…すごく愛してくれてるのが ものすごく伝わってくる… 私にはもったいない人だよ…」 「そう…それなら良かった… …じゃ…マモくんの事ね…」 「えっ…」 「あなたは私と違って… 普通に幸せになれると思ってたんだけど… マモくんの事が気になるのね… たぶんあなたはずっと前から マモくんの事は好きだったはず… でもそれは家族のような… 瑛さんや奏海に対する気持ちと同じだったと思うの だけど…久しぶりに会って マモくんの優しさとあなたへの溢れるほどの愛情を 知ってしまったら… 私でもきっと迷ってしまうと思うわ 見返りなんて求めない… あなたの幸せだけを願ってるんですものね… 私は理子ちゃんからずっと聞いていたから マモくんのあなたへの愛をね…」 「ママ…」 「マモくんね…あなたと会えなくても 理子ちゃんにね、いつも聞いていたのよ ゆーあはいま何が好きなのかな? ちゃんと笑ってるかな? いまも医者を目指してるのかな? いつも理子ちゃんに聞かれたわ… マモが気にしてるからって あなたがパパを亡くして辛い思いをしてから ずっとマモくんはあなたの事を気にかけてくれてたわ」 私の知らなかったマーモを聞いて 胸が苦しくなってきた… 苦しいけど…なぜか心はあったかい… いまだけじゃなくて… ずっとマーモは私を見守ってくれてた 「理子ちゃんがね… マモくんが中学生の時に言われたそうよ 『母さん、僕は医者になるよ 小金沢の子供だからじゃない 圭おじさんが亡くなってからずっと思ってた 圭おじさんが病気で亡くなって…悔しかったから… だけどいまはそれ以上に ゆーあの側にいるために医者になりたい… そう思うんだ…』 あなたがずっとお医者さんになりたいって言ってるって 理子ちゃんに話してたから… マモくんはその時から 医者になってあなたの側に来ようって決めてたのね」 向かい側に座っているママが手を伸ばして 私の頬に触れた あっ…私泣いていたんだ…
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